金額交渉があった場合はある程度柔軟に
中古物件を売却すると、買い手から値引き交渉されることがあります。その値引き交渉されたときの「対応」によって、物件価格は大きく異なってきます。そのため、値引き交渉は駆け引きが大切になり、ある程度柔軟に対応する必要があります。そこで今回は、買い手から値引き交渉があった場合の対応について詳しく解説します。
売り出し価格の設定
まず、そもそも売り出し価格の設定によって、値引き交渉の対応方法は変わってきます。そのため、まだ売り出し価格を設定していない人は、価格設定は慎重に行った方が良いです。また、既に売り出し価格を設定している人は、その売り出し価格の「前提」を加味した上で交渉しましょう。
基本的には値引き交渉はある
冒頭でもいいましたが、中古物件を売り出すときには、基本値引き交渉はされるものと思っておいた方が良いです。特に周辺に競合が多い物件であったり、何かしらにネックがあったりする物件などは、値引き交渉される可能性が上がります。
「何かしらのネック」とは、たとえば「駅距離」や「周辺環境」です。一戸建てであれば駅距離が15分以上になってくると、検討者は一気に減ってきます。また、「目の前に大きなマンションがある」や「周辺に嫌悪施設がある」場合にも、値引き交渉される可能性が上がります。いずれの場合も、その物件の需要が大きく減ってくることが理由になります。
もし、売却しようとしている家を新築で購入したのであれば、中古物件の売買経験はないと思います。そんな人は要注意です。新築だと値引き交渉できる物件はそう多くないので、そもそも「値引き」という概念がない可能性があるからです。そういう方は、「中古物件は値引きがある」と一度頭を切り替えましょう。
値引き前提にするかどうか
売り出し価格の設定をする場合には、売り出し価格を値引き前提で設定するかどうかが大切です。つまり、「少し高めに売り出しておいて値引されることを覚悟する」か、「値引きには応じない価格で設定する」かのどちらかということです。
値引きに応じる価格設定
値引き前提で価格を設定するときは、以下のような場合です。
- 競合物件が多い
- 周辺物件の売り出し価格が平均的に高い
- 近くで新築物件供給されている
先ほどいったように、基本的には競合物件が多いと値引き交渉されやすいです。理由は、「○○万円であれば購入するが、それ以上の価格であれば他の物件を買う」と、買主側が比較対象を出し、値引き交渉しやすいからです。そのため、値引きされることを覚悟して、少し高めの価格設定にする必要があります。
また、周辺物件の売り出し価格が平均的に高いときも、値引き前提の価格設定にするべきです。なぜなら、売り出し価格が高いということは、多少高く価格を設定しても「高い」とは思われないからです。高く売り出しておいて、もし値引き0円、もしくは少額の値引きで済めば、利益が大きくなります。
値引きに応じない価格設定
一方、値引きに応じない価格設定にした方が良いときは、以下のような場合です。
- 周辺物件が安い価格で出ている
- 物件に自信がある
まず、周辺に安い価格の物件が出ているときは、値引きに応じない価格設定にするべきです。言い換えると、周辺に安い物件があるときに「値引き前提の少し高めの価格設定」にすると、周辺から「高い物件」と思われてしまいます。そうなると、集客ができず、売却に苦戦します。
また、物件に自信があるときも値引きに応じない価格設定にするべきです。たとえば、「駅近」や「仕様・設備が良い」など、秀でているポイントがあれば売りやすい物件になります。
値引き交渉への対応
つづいて、実際に値引き交渉されたときの対応についてです。どんな値引きをされたとしても、ある程度柔軟に対応するように心がけましょう。
値引きの理由を聞く
まず、値引きの理由を聞くことを心がけましょう。基本的には、値引き交渉などは全て不動産会社の営業担当者が行いますので、営業担当者に「いくらで値引きされても必ず『理由』を聞いてください」と伝えておくと良いです。
根拠ある値引き
なぜ理由を聞くかというと、その値引き理由に根拠があるかどうかを確かめるためです。根拠がある値引きであれば、値引きをする下限を設定できるので、交渉がしやすいです。たとえば、自分の物件と競合している、B物件と比較している顧客だったとします。
そして、自分の3,500万円で売り出している物件を、200万円値引きの3,300万円で交渉してきたとします。その理由は「B物件と比較検討している。B物件は3,300万円なので、同額であればこっち(自分の物件)を買う」という理由でした。
この理由を引き出しておけば、値引き交渉の落としどころは「B物件との比較」になります。たとえば、駅距離や広さなど、B物件と比較していかに自分の物件が優れているかを伝えるのです。それを上手く伝えることができれば、もう少し高い金額で売れるかもしれません。極端な話、その理由が嘘でも構わないのです。要は、値交渉の「落としどころ」になる事項を見つければ良いです。
根拠ない値引き
一方、根拠ない値引きをしてくる場合には、一度きちんと「NO」と伝えるのも手段の一つです。営業担当者の立場からすると、ズルズルと値引き交渉されるのは避けたいです。そのため、根拠のない値引きには一度「NO」と言いつつ、「その金額は厳しいです。ただ、売主に相談するので、妥協できる範囲を教えてください」と探りを入れてみましょう。
不動産会社に方針を伝える
値引き交渉のときの鍵を握っているのは、不動産会社の営業担当者です。その不動産会社の営業担当者に、値引き交渉をするときに事前に以下の情報を伝えておくと、営業担当者も値引き交渉がしやすいです。
- 値引き額の下限設定
- 売り出し価格のスケジュール
値引き額の下限を伝えておく
まず、不動産会社に値引き額の下限を伝えておきましょう。つまり、「○○万円であれば、売却します」という、売却価格の下限を伝えておくということです。この金額を伝えておくことによって、営業担当者がある程度柔軟に対応できます。
仮に、3,500万円で売り出していた物件の、売却価格の下限が3,300万円だったとします。そのときに「100万円値引きの3,400万円なら購入する」という顧客が出てきたとします。この状況で、営業担当者が「売却価格の下限」を知っていれば、3,400万円で売却する前提で話ができるのです。
しかし、この下限を知らなければ、「NO」と突っぱねてしまう可能性があるのです。そうなると、3,400万円でなら成約していた顧客が離れていってしまうリスクがあります。
売り出し価格変更のスケジュールを立てる
また、売り出し価格変更のスケジュールを立てておきましょう。たとえば、3,498万円で売り出した価格を、2ヶ月後に売れていなければ3,398万円に下げると計画していたとします。そうすれば、仮に2ヶ月が経過する直前に「3,400万円なら購入する」という人が現れれば、どうせもうすぐ価格を下げるので、その人に売ってしまって問題ありません。
しかし、この計画がないことには、営業担当者も判断できないので、先ほどの例と同様、「NO」と突っぱねてしまう可能性があります。そうなると、せっかく購入してくれた顧客をみすみす逃してしまうかもしれないのです。
このように、家を売却していて値引き交渉があった場合には、基本的には柔軟に対応しましょう。その柔軟な対応をするためには、予め不動産会社の営業担当者と事前に話し合っておく必要があります。また、そもそもの売り出し価格の設定も、後々値引きされたときに重要になってきます。